薬剤情報提供

(参考資料)

薬には目的以外の作用が出ることが時たまあります。過去に起こったサリドマイド事件やソリブジン事件が薬の副作用や相互作用の怖さを物語っております。このふたつの事件がきっかけとなって、平成94月に薬剤師に薬剤情報提供が義務づけられました。

提供する薬剤情報の元になるのは、薬の添付文書です。添付文書にはA4用紙1枚に収まりきらないほどの膨大な情報が記載されております。これらはそのまま調剤された薬とともに患者へ渡されても、はたして役に立つかは疑問です。医師は直接患者と話しながら診断治療とともに薬の処方を組み立てます。

薬剤師は処方せんと調剤ずみの薬と薬剤情報を記入した説明書を持って、患者と接します。この立場の違いを踏まえ、話し合いと検討がなされた上で説明書の発行へとこぎつけることが出来ます。

ここでは上田総合病院の薬の説明書について述べましょう。

薬の説明書には薬の名前、効能・効果、薬の写真、用法・用量、使用上の注意が記載されております。

「薬の名前」については原則的にシートに書いてあるものを利用します。ちまたには薬の本があふれていますので、患者がさらに詳しく調べるためには、薬の名前がハッキリした方が良いからです。情報の公開にもつながります。

「効能・効果」は、保険で使用を認められている病名や症状を並記しております。処方せんに病名の記載がないのでなかなか思うように患者個人々々への情報提供にはなりません。

薬の写真はデジタルカメラでの画像を載せていますから、写真での薬の大きさや色の調整がうまくいかないものもあります。白い粉薬がややピンク色になったり、錠剤の色がそのまま出ていない場合もあります。

「用法・用量」については、薬袋に書いてある13回食後服用などをコンピュータの入力法の関係で今は記入出来ません。しかしこれは何度書いてあっても良いことなので早急に記入出来るようにしたいと考えています。

「使用上の注意」には副作用、相互作用、服用上の注意、保管上の注意の4点が含まれます。副作用は一般的によく見られることは医師も話しますから同じように記入します。10000人に1人に起こった副作用については記入すれば、むやみに不安感を患者に持たせることになると考え、記入はしません。しかし確率が低くても重大な副作用には必ず前症状が出ますからこの前症状について記入するようにしております。

相互作用は、複数の薬での重複服用を最も警戒します。また最近は食物との関連も注目しております。よく知られているのはアダラートとグレープフルーツ、ワーファリンと納豆の同時服用があります。

「服用上の注意」は、飲み方や用い方についてです。縣濁液の薬は用いる前に必ず振り混ぜてから使用しなければいけません。こども用の粉薬は水に溶かして飲むように指示します。錠剤でも水なしで飲むものや、「しゃぶっていて下さい」とするものもあります。水薬では苦いので2倍に薄めて飲むように指示するものもあります。肛門に挿入する、膣に挿入するなど、実にさまざまです。

「保管上の注意」はとても細かくなります。冷蔵庫で保管するもの、冷蔵庫には入れないで日陰に保存するもの、光に当てないようにするものなど、これもいろいろです。

薬剤情報提供は、患者がより良い治療に専念出来ることを目指しています。薬は指示通りに正しく服用し、その結果を医療者へフィードバックされることが、さらに良い治療の効果を引き出します。皆様が提供された薬剤情報を大いに活用されることを希望しております。