所かわれば

最近いろいろな病院の薬局長とお話する機会がたびたびありました。患者様への服薬指導や薬局内の業務の進め方など、随分と考え方が違うことを実感しています。

A病院は埼玉県というよりはもう茨城県という感じの町にあります。半官半民の病院なので、かなり病院全体に公共性を重視する教育がなされています。薬局長は50歳前の男性で、考え方は非常にはっきりしています。すなわち「薬有るところ薬剤師あり」「いつも頭を使え」などなど。

彼はかなりのやり手なのです。ですから20人ほどいる薬剤師たちは必死で働く状態です。時として女性には仕事がきつく、長く勤務が続かないということもあるようです。民間病院育ちの私などからみれば、機器類も豊富、施設もきれいでうらやましい限りですが、仕事が大変なことはどこも同じということでしょうか。

B病院は医療法人とはいえ、病院長のワンマン経営ぶりはかなりのもののようです。すべての職員は院長の意向で動きます。幸い30代の女性薬局長は「お気に入りさん」のようです。彼女は毎日若い薬剤師たちを励まし、一生懸命働いています。でも救急病院なのに、前もっての準備をしておけばという理由で、当直はありません。

この場合“オンコール体制”といって、自宅待機を順番に行うのです。当番になった時はかたときも携帯電話を手放せず、これもかなりのプレッシャーなのです。

また、「薬局では外来患者様への投薬さえきちんと早く丁寧にできればそれでよろしい」との院長の意向なので、彼女はこのことに一生懸命なのです。私は「今どき 入院の患者様の薬に関することもしないでどうするの」とつい口調が強くなってしまいました。しかし相手は悪気もなく、そのようなことを考えたこともないようで、「お口ポカン!」としている様子を見た時、これは大変と、つい長く「世間は、、、、。」などと話しはじめてしまいました。

そして今私がいるC病院です。この病院は最近、急性期病床を療養病床に変更しました。いわゆる老人病院になったのです。ですから薬をむやみに使ったり、積極的な治療をすることはほとんどなくなりました。高齢の方々の治療は病状把握後に家族と相談になります。もちろん緊急性を要する時、話は別です。

今この病院での私たち薬剤師の働きぶりは普通の病院と少々違います。褥瘡(じょくそう)の患者様が出ればすぐデジカメを持って「参上!」。写真をとり、紙に印刷し、カルテに入れます。また治療に使う薬について医師や看護師にアドバイスもします。

疥癬(かいせん)が出た時もそうです。医師が採った皮膚の一部を顕微鏡で見て、疥癬の診断に役立てます。もちろんこの疥癬の治療薬は特殊なものなので、調製も私たちがします。私たちのモットーは「何でも屋」です。とにかく他のスタッフの信頼を得るために、東奔西走しているのです。

今多くの病院では、外来患者様には調剤薬局の薬剤師が、入院患者様には病院薬剤師がお世話するスタイルが、定着しつつあります。どの病院でも薬剤師が医師やスタッフに支援を惜しまず、活躍してほしいというのが、私の強い願いです。

また付録ですが、病院には「医薬品情報管理室」があります。これとは別に「お薬相談室」を設けているところもあります。これらはすべての方々が薬に関する相談を持ち込んでよいところなのです。ほとんど専従の薬剤師がおりますから、ぜひ一度のぞいてみて下さい。

最近私のところでは、糖尿病が心配で血糖測定器を買いたいといわれる方が見えました。また複数の病院にかかられている方が何十種類とお薬を持ち込まれたこともありました。この時患者様がかかられていた各病院や医院などに連絡し、飲み過ぎを回避できて本当によかったと思いました。